【レビュー】電気グルーヴ「DRAGON」電子音の快楽追求がピークに達したアシッドな大名盤

もういい加減、不祥事を起こした人の過去の作品を販売をやめたり出荷停止にするのやめたらどう?
そんな当たり前のことが改めていろんなところで語られるキッカケになった、ピエール瀧の事件。
誰かが言ってたけど、例えばシド・ビシャスなんかは殺人容疑で逮捕されてオーバードーズで死んだのに、SEX PISTOLSのCDは普通に売られてる。電気グルーヴが出荷停止なら、ピストルズなんか永遠にお蔵入りになるはずだろう。

まあ目先の批判をかわすためだろうけど、生み出された作品と罪は区別すべきだと思う。

そんな、店頭から回収・出荷停止にされてしまった電気グルーヴの作品だけど、その中でも電子音楽界に与えた影響が大きいアルバムが「ドラゴン」だ。

もう、私なんぞが改めて紹介するのも気が引けるレベルの名盤なので、個人的な感想になってしまうけど。
初期のオモロラップ的な要素は影を潜め、前作「ビタミン」からの本格テクノ路線まっしぐらで、インスト楽曲と歌モノが交互に収録されている。まさに丸ごと通しで聴くべきアルバム。TB-303のレゾナンスバリバリのミョンミョンサウンドにより聴覚を刺激されまくり。
私が特にお気に入りなのは「カメレオン・マニア」「ブラジリアン・カウボーイ」といったインスト曲。刺激的な音のパーツの組み合わせで音の快楽を追求して疾走していくことで、まさに「ポポ」で歌われているようなアシッド感に見舞われ、それはラストの「虹」で大団円を迎える。

あまりにも有名な、テクノアンセムである「虹」。

シングルヴァージョンも良いけど、10分近くあるこのアルバムヴァージョンこそ至高。イントロから音が一つずつ重なっていき、歌が入りフレーズが増えたり減ったりしながら、ピークを迎えた後は徐々に一つずつ消えていく、まさに虹のような儚い音空間。

それまでの曲は「虹」につなぐためにあったのかと思うほどであり、電気グルーヴの海外展開へのキッカケとなった曲でもある。

 

気持ちの良い音やリズム、それ自体に意味は持たないけど、それらの組み合わせによって、感じ方は聴き手に委ねられる「自由」な曲。

JPOPのような「共感できる歌詞」による意味の押し付け(ガンバレ、とか)とは正反対のオルタナティブなものだと思うけど、メッセージがないからこそ音から想像力を掻き立てられてて五感を刺激される、という感じかな。

歌詞のある曲についても、意味がどうにでも取れる抽象的なものであり、歌もパーツの一つという考え方は徹底している。

 

そんな歴史的な名盤。

早く再発してくれ!

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