【レビュー】AUTECHRE「LP5」表層的な刺激とは異なる、密室感と痛みを感じるトラック

2018年に私が一番聴いた音楽は、おそらくコーネリアスのアルバム「Mellow Waves」だと思う。前作よりもさらに音数が減った緻密な音作りは非常に魅力的で、ライヴも見に行ったりした。

安っぽい言葉で言うと「実験的」ってヤツなのだが、近年のコーネリアスの異常なまでに緻密な音作りを聴いていて思い出すのが、昔私が聴いていたオウテカだったりする。

 コーネリアスとオウテカを並べて語るのは変なのかもしれないけど、思い出しちゃったのだから仕方ない。

 

というわけでここで紹介するのはオウテカの通称「LP5」と呼ばれるアルバム。世の中的にもかなりの名盤の扱いになっていたり、アーティストに与えた影響も大きいと言われている。私が最初に聴いたオウテカの作品が確か、これだったはず(人に借りて聴いたはずなのでハッキリ覚えてないけど)。

その後、他のアルバムも一通りは聴いたけど、やっぱりトータルで一番よく聴いたのはこのアルバムかな。オウテカと言えばどうしても「Tri Repetae」以降の無骨なリズム作りのイメージが強いけど、他には無いこのアルバムのメロディアスさと、何より「全く新しい音楽」と感じさせてくれた、細かく計算された音やフレーズ・リズムの配列や組み方といった部分だろうか。


この曲なんかまさにそう。メロディアスかつ刺激的。
だけど、過去作のインダストリアルな金属音的な刺激や、細かくリズムを切り刻んだドリルンベースの刺激ではない。
絶妙な加減でフィルタを絞ったシンセ音の温かみと、対比するかのように荒々しく歪ませつつも細かく歪み具合を設定されたであろうリズム音はまるで、真っ暗な海の奥底をひたすら進み続けているような密室感と、そこで時折感じる痛みを表現しているかのよう。

踊るためのアッパーな音楽とはかけ離れた、まさに自宅の暗い部屋で聴くべき電子音楽。オウテカの他の作品も久々に、聴き直してみようと思う。

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